立山と宇奈月と気候変動。

 11月も半ばとなり、今年も残すところあと1か月半となりましたが、天気が良ければエアコンを入れなくても充分心地よく過ごせる日が続いています。富山県の11月の最高気温の平均を調べてみると、この10年間は15~18度くらいでしたが、今年は11月に入っても25度を超える夏日が数日ありました。9月に至っては一昔前の夏と同じで、10月も日によっては半袖でOKという感じでした。今年は6月から30度を超える日々が続いており、6月~10月中旬までの4ヶ月半、一年のうち3分の1以上が夏だったという印象です。学校の教室にエアコンなどなかった20~30年前と比較すると、気候が大きく変化しているのは明らかです。この1ヶ月間に訪れた立山と宇奈月では、特に気候変動を実感しました。

雄山山頂と一ノ越山荘

 立山の雄山に登山に出掛けたのは10月中旬過ぎでした。コロナが流行する前までは、時々山に行っていたのですが、随分久しぶりの登山となりました。この日の平野部の最高気温は25度の夏日でしたが、標高2450mの室堂ターミナルにおいては、寒いというほどではありませんが、随分と涼しく感じました。立山の紅葉の見頃は既に終わっていましたが、室堂周辺には外国の方々を中心にそれなりに観光客が見られました。今年で最後となる立山トンネルトロリーバスを目的に訪れた人も多かったかもしれません。しかし時期的には北アルプスの秋山シーズンは既に終了し、山小屋の営業もそれに合わせてほとんどが終了しています。そのためか雄山方面へ向かう登山者は少なく、大げさに言えば山を独り占めしているかのような雰囲気を味わうことができました。一ノ越から雄山山頂にかけての登りでは少し風が出てきたこともあり、ジャケットを着て山頂の雄山神社まで登りましたが、例年であれば雪が積もっているであろう事を考えると随分と快適な山行でした。結果的に今年の立山初冠雪は11月8日。昨年より31日遅れの観測史上2番目の遅さでしたから、季節がまるまる1ヶ月ずれてきている感じでしょうか。

雄山山頂に向けての登り
山頂にある雄山神社の峰本社

 11月初旬には黒部の宇奈月に行く機会がありました。念のため防寒着を持って行ったのですが、駅の周辺を散策する限りはまったく必要ありませんでした。連休最終日かつ天気が良かったこともあり、トロッコ電車の乗車口には行列ができていました。通常であればトロッコ電車の終点は欅平駅となりますが、正月の能登半島地震による落石の影響で、全線開通はされていません。現状では猫又駅が終点になっているのですが、通常は発電所や工事の関係者以外降りることができない専用駅であることや、日本で唯一駅名に「猫」がつくということで話題になっているようです。しかし私が宇奈月で気になったのは、猫よりも亀で、実際には亀ではなくカメムシです。今年はカメムシが大量発生し、店舗の外壁などいたるところに結構な数が張り付いています。数年に一度はこのように大量発生するそうですが、これも気温が高かったために餌となる木の実が豊作だったからと言われています。そして今年は9月の奥能登豪雨によりトロッコ電車の線路が土砂崩れの被害を受けましたが、5年前にカメムシが大量発生したのは、台風19号の大雨の影響で長野では北陸新幹線の車両が水没した時期と重なります。またカメムシが多い年は大雪になるという話を温泉街のお店で聞きました。スキー場がある宇奈月温泉にとっては良いのかもしれませんが、是非ほどほどにお願いしたいところです。カメムシも豪雨も大雪も、気候変動による気温上昇の影響が様々な形で現れているという事なのでしょう。

猫又駅 〈 黒薙温泉旅館HPより 〉

 立山と宇奈月の様子を例に挙げるまでもなく、気候変動が私たちの生活に大きな影響を及ぼしているのは明らかです。世界中でカーボンニュートラルや脱炭素への取り組みが進められているなかで、日本でも温室効果ガス排出削減への取り組みが推進されています。建築業界においては、2025年4月からの「省エネ基準の適合義務化」は大きなトピックとなっており、原則としてすべての新築住宅や非住宅に対し省エネ基準への適合が義務化されますが、あくまで国が定めるのは最低基準です。より厳しい基準として、環境先進国のドイツやスイスの省エネ基準、日本においてもheat20等の民間基準がありますので、設計者としては様々な条件を検討したうえで、ふさわしい基準を設定する事が重要になりそうです。省エネ性能が高ければそれだけで良いとは思いませんが、健康で快適な生活に寄与する建築をつくっていく上では、欠かせない要素なのは間違いないでしょう。