新しい景色。

 お盆は明けましたがまだまだ暑い日が続いています。二十四節気の立秋の期間にあたり、秋の始まりという事になりますが、秋の気配を感じられるのはまだまだ先になりそうです。古代中国で農耕作業の目安として使われていた暦なので、地域も時代も異なるようでは多少の違和感は当然ではあります。しかし、これだけ雨らしい雨も降らずに、熱中症アラートが出されるような35度以上の日々が続くと、電気代が高騰するなかでもエアコンの使用は不可欠で、夜間を含めてつけっぱなしの方も多いのではないでしょうか。

 積雪地域の富山県でも、建物の屋上や屋根の上に太陽光パネルを設置している風景はよく見られます。晴天の日が続くなかでこのような光景を見かけるたびに、設置した甲斐があっただろうなと思います。東京都では大手の住宅メーカーを中心に、中小規模の新築建築物への太陽光パネルの設置義務化の条例が施行されます。条例や太陽光パネルそのものについては、様々な課題があるように思いますが、海外からの輸入に多くを頼らざるを得ない化石エネルギーへの依存から脱却し、国内での安定供給が可能な再生可能エネルギーを有効に活用していく必要があります。12%前後といわれるエネルギー自給率の低さを改善していくことは必要不可欠でしょう。

 再生可能エネルギーとは「非化石エネルギー源のうち、エネルギー源として永続的に利用できると認められるもの」であり、具体的には太陽光、風力、水力、地熱、太陽熱、大気中の熱その他の自然界に存在する熱、バイオマスの7種類が法律上定義されています。特に周囲を海に囲まれている日本においては、資源としてのポテンシャルが最も見込まれているのは風力、特に洋上風力で、太陽光の10倍のポテンシャルという調査もあります。陸上に比べて洋上は風を遮る障害物がなく、発電に適した秒速7m以上の風力が安定して得られることや、土地や道路の制約がなく大型の設備の導入が比較的容易なことに加え、騒音等の影響が小さいこと等が大きなメリットです。積雪地や日射量が少ない地域においても、昼夜を問わず年間を通じて安定したエネルギーが供給できるため、富山県のような地域には適した方式かもしれません。

SEP船による建設作業(WIND JOURNALより)

 入善町横山の沖合には、今年の秋からの稼働を目指している洋上風力発電の風車が3基建設されています。4月から6月にかけての工事期間中には、最高到達点が152mの巨大な風車建設ために、清水建設が建造した世界最大級のSEP船「BLUE WIND」が姿を現していました。その珍しい光景を一目見ようと、町外からも見物人が訪れるなど、TVや新聞でも取り上げられていました。これらの風車は、コスト面で有利な着底型(海底に基礎を設置する方式)を採用ているため、水深が比較的浅い場所に設置されています。海岸から1㎞以内に見ることができる巨大な3基の風車が並ぶ風景は話題性がありますが、景観に対しての影響も少し考えたいところです。洋上風力発電が普及している欧州では、景観や生態系への影響に配慮して、風車建設の基準として離岸距離を設定している国があります。英国やドイツ、オランダといった国は、数十㎞のスケールで離岸距離を設定した上で、景観への影響を関連付けた視覚的影響評価を行っています。一方で日本においては離岸距離による景観影響評価は行っていないようです。日本と比較して浅瀬が広い範囲で広がっている欧州の地形が可能にしている基準かもしれませんが、海岸の近くに巨大な風車が大量に並ぶ風景は、あまり美しいものではないでしょう。風力発電導入量が全国一位の秋田県では、海岸沿いに巨大な風車が大量に建設されていますが、反対意見も多くあるようです。これらの光景を見ると、入善の方は3基程度で良かったと感じます。入善沖の3基の風車は、場所にもよりますが入善各地から見ることができ、新しい景色が生まれています。エネルギーや景観などについて考える良い機会かもしれません。

秋田県海岸線の風力発電施設(JAWAN通信№139より)